コナッツオイルの神秘

世界各国では規制されつつあるトランス脂肪酸ですが、日本では多くの食品に含まれています。トランス脂肪酸は構造中にトランス型の二重結合をもつ不飽和脂肪酸で、元来自然界に存在しない脂肪酸です。溶剤抽出や水素添加により発生すると言われています。

パン、お菓子、マーガリン、ショートニングなど、トランス脂肪酸を含んだ油を使った食品があふれています。トランス脂肪酸は体の細胞に入り込み、細胞の働きを狂わせ、様々な病気のもとになると言われています。

トランス脂肪酸の摂取量が多いと、年齢、性別にかかわらず、DHAの不足でイライラしたり、攻撃的になります。またホルモンバランスの乱れにより‘うつ’の発症率も高くなります。他の要因と組み合わさって、脳の錆が起こすアルツハイマーなどの脳疾患が起きてしまうこともあります。

心身の健康、特に‘頭’の健康を誰もが望んでいます。そして近年、ココナッツオイルに多く含まれる中鎖脂肪酸がアルツハイマー病の予防に効果があると分かってきました。アルツハイマー病は神経細胞が脱落して脳が極度に萎縮していく病気です。加齢による代謝活性不足、脳への栄養不足、脳への酸素不足を防げれば、アルツハイマー病を恐れなくてすみます。代謝活性を向上させて脳に酸素や栄養を与えることは、日常生活の中で工夫すれば誰にでもできます。活性酸素を発生させないようオメガ3系脂肪酸を多く含む良質な油を使います。活性酸素を除去するポリフェノ―ルやビタミンEなどの抗酸化物質を含む食品を摂ることも大切です。

アルツハイマー病に罹る人は、ブドウ糖の脳神経細胞への取り込みに障害を起こしている場合が多いので、どんなにブドウ糖を追加しても、むしろ血糖値が上がるなどの障害が起こり逆効果になります。

そこで新たな脳の栄養源になるのが‘ケトン体’です。体内に蓄えられた中性脂肪から生成されます。ブドウ糖の取り込みに障害のある人は、このケトン体を有効に活用することがすすめられます。3大栄養素の炭水化物、脂肪、たんぱく質のうち、ケトン体になりやすいのが「脂肪」です。なかでも‘中鎖脂肪酸’は消化吸収が早く、体内での代謝が優先されるため、ケトン体になりやすいという特徴があります。アルツハイマー病の不安がある人には、中鎖脂肪酸を特に多く含むココナッツオイルがおすすめです。朝、昼、夕食の前、ヨーグルトにココナッツオイルを混ぜたものを摂って、ウォーキングなどの軽い運動をすると、ケトン体の発生量が増すので効果的です。

ココナッツオイルは加熱用としても適しているので炒め物や揚げ物に使うと、アルツハイマー病の予防効果はより一層高まります。脳の酸素不足を解消するには、適度な運動で脳の血流量を上げましょう。最近の研究では、ケトン体を構成する主な物質が、体内の活性酸素を無害化する酵素を活性化させていると考えられ、体内の細胞の老化を防ぐ効果も期待できることが分かってきたようです。

人間の体を構成しているのは「水」「脂質」「たんぱく質」です。良い水を選ぶことと同じように、今や体に良い「油」を選ぶ時代です。これからも自分、家族、そして周りの人達が元気で健康でいられるよう、油のことをもっと学んでいきたいと思っています。

<参考文献>
・元気になる「油」、病気になる「油」
監修 川村賢司(医学博士) 編著 健康ジャーナル
・元気のひけつ「食事にちょい足しで効果」
朝日新聞社