日本人は亜麻仁油をオメガ3に変換できないのか?

10月15日に神戸で行われたマイスターコースで「亜麻仁油に含まれるαリノレン酸は日本人にはオメガ3に変換する消化酵素がないと聞いたがどうなのか?」と質問がありましたので、オーソモレキュラーの観点からアプローチしてみましょう。

食品に含まれるオメガ3系脂肪酸はαリノレン酸 (C18)、EPA (C20),DHA(C22) があります。

これらの脂肪酸は体内でそれぞれ違う役割があります。

αリノレン酸は主に細胞膜等の細胞の部品として、そしてβ酸化によりエネルギーとして使われます。余ったら脂肪細胞で蓄えられます。

EPAは主に抗炎症作用を促すホルモン等に使われます。

DHAは脳神経細胞にとり重要な脂肪酸です。脳の60%は脂肪であり、その15~20%はDHAで構成されます。重量ベースでは脳の9~12 %になります。DHAの不足はパーキンソン等の神経変性やアルツハイマー等の認知系の病気へとつながります。

エネルギー系には他の脂肪酸も使われますが、αリノレン酸へ期待される役割の多くはEPAとDHAが担っています。

αリノレン酸は⇒EPA⇒DHAというように体内で不飽和化と脂肪酸伸長によって変化します。なので亜麻仁油を摂っていればオメガ3系は問題ないと広く思われているようです。

しかし、αリノレン酸からEPAへは若い男性でわずか8%、DHAへは0-4%しか変換されません。若い女性ではエストロゲンの作用でEPAは21%、DHAは9%です。

そしてαリノレン酸からEPAやDHAを作る際に必用な不飽和化酵素であるΔ6Desaturase は加齢とともに少なくなり、変換効率がさらに低くなりるだけでなく、この酵素はオメガ6であるリノール酸からγリノレン酸を作る際の不飽和化にも使われていますので、リノール酸の摂取が多い現代食ではさらにEPA,DHAへの変換が難しくなります。

またこの酵素が働くにはビタミンB3, B6, C, そしてミネラルである亜鉛あマグネシウムも必用です。加工食品の摂取でこれらの栄養が摂取できてないだけでなく、体の中で消費されている状態では、EPA,DHAへの変換は抑制されます。

このような理由で、EPA,DHAを体にいれるにはαリノレン酸目的の亜麻仁油の摂取ではなく、魚油からEPA,DHAを直接摂取した方がよいでしょう。

亜麻仁油などαリノレン酸を含む植物が生い茂る地域に古代から住んでいる人は不飽和化酵素を持っているかもしれませんが、亜麻仁油は比較的寒い地域で栽培されますので、温暖な地域に住んでいた日本人には確かに酵素は少ないかもしれませんが、今回は人種や地域に特定した研究を見つけることができませんでした。

いずれにせよ、亜麻仁油は非常に酸化しやすいオイルですので、使用する場合は遮光性の容器で冷蔵保存し、開封後は速やかに消費しましょう。

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