肝臓病の方がココナッツオイルを摂ってよいのか?

「肝臓病の方がココナッツオイルをとってもよいのでしょうか?」という質問を10月の福岡のマイスターコースで頂きました。

確かなのは一言でお答えすることがとても難しい問題であるということです。

そしてその他多くの疾患と同じ様に、肝臓病の解決方法は肝臓への負担を減らしながら、その原因を解決していくことが大切です。

ココナッツオイルはその中鎖脂肪酸成分が肝臓でケトン体へ転換されますので、肝臓に負担がかかるのではないか、という考え方があります。

「重い肝臓病の人にはこの食事療法は適切でないかもしれない。中鎖脂肪酸をケトン体に転換するには健康な肝臓が必要だ。」 アルツハイマー病が劇的に改善した! メアリーニューポート

そして転換されなかった脂肪酸が肝臓にたまり脂肪肝になるという考えです。実際にココナッツオイルを摂取した方が脂肪肝になったというブログや投稿サイトでの体験談はいくつかウェブ上で見つけることができます。(どの程度の質のココナッツオイルを摂取していたかはわかりません)

中鎖脂肪酸のケトン体への転換がどの程度肝臓の負担になるのかはまだ研究において明確ではないようです。

では、ココナッツオイルではなく、他のオイルを摂取した場合の肝臓への負担はどうでしょうか。

肝臓は脂肪の分解酵素である胆汁を生産しています。長鎖不飽和脂肪酸を多量の含んだココナッツオイル以外の植物油の消化にはこの胆汁が不可欠ですので、当然負荷はかかります。

また肝臓は身体で最も重用な解毒器官ですので、酸化油やトランス脂肪酸の摂取を原因としたあらゆる毒素による負担も大きくなります。

その他、ココナッツオイルに多量に含まれる中鎖脂肪酸が肝臓に与える影響として、フリーラジカルの発生を阻害することや内毒から肝臓を守ること、アルコールによる炎症を抑えることなどがわかっています。

ココナッツオイル健康法の著者ブルースファイフ博士はC型肝炎ウイルスの殺菌作用について著書で述べていましたが、肝臓病の進行度などがそれぞれ違う患者さんに、体内でこの殺菌作用がどのように働くかも明確には分かっていません。

ここで悩ましいのは肝臓への負担を下げるために脂肪の摂取を減らしていくと、脂肪は健康にとって不可欠な栄養素であるため、身体に複数の不具合が起きてきます。特に高齢者は認知症などの脳・精神疾患への影響を考えなければいけません。肝臓病の進行度により肝臓への負担と脂肪摂取のバランスを考慮していかないといけません。

肝臓が気になる方がココナッツオイルを摂る時はまず少量から始め、GOT(AST)/ GPT(ALT) をモニタリングしていくとよいと思います。

そして重度の肝臓病の方はココナッツオイルの成分に理解のある医師のもと、食事内容を相談をしてオイルを使う量を決めてゆくとよいでしょう。

Kono, H., et al. Medium-chain triglycerides inhibit free radical formation and TNF-alpha production in rats given enteral ethanol. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2000 Mar;278(3):G467-76.

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Nanji, A, et al. Dietary saturated fatty acids reverse inflammatory and fibrotic changes in rat liver despite continued ethanol administration.